2008 |
06,16 |
«歪曲理論»
書きかけてやめてるのはいつ再開できるやら、、、
アニ魂がこっちでは京次郎さんのやつの後編だったので、それともちょっと絡められるお話。
もうほんとありふれたネタなんですけど、銀新スキーとしてはやっぱ考えちゃうんだなこれ(苦笑)
因みに京次郎さん編は京次郎さんにバカヤロー!とも思うけどそれ以上に銀さんにバカヤロー!!と思います。鼻フックデストロイヤーかけてやりたい。
そんな感じがありありと表れたSSだよなぁ・・・;
OKな方はつづきからどぞー!
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泣かせたいわけじゃない。
でも、
泣いて欲しいと思う。
歪曲理論
くるくると、全身に包帯が巻かれていく様を、俺は黙って見守っていた。
些細な刺激にも痛む傷口を無視しながら、包帯を巻いていく手をじっとみつめていた。
夜明けが近い。
夜が更けて尚賑わいを増すかぶき町も、この時間帯だけは皆寝静まって静かだ。
ゆっくりと、朝日を待ち望む時間。
万事屋の中も例に漏れず、静寂に包まれている。
時折漏れる、新八が鼻を啜る音を除いては。
どてっ腹に風穴をあけて帰宅してきた俺に、寝ずに待っていた新八は蒼白になった。
「大丈夫だから」と言っても聞かず、滂沱のように流れる涙も鼻水もぬぐいもせず、せめてもの応急処置を施してくれた。
夜が明けたら、真っ先に病院に担ぎ込まれるのだろう。
手当てをしている間、新八は涙声で幾度も俺をなじった。
「何度死にかければ気が済むんですか」
「僕と神楽ちゃんがどんだけ心配したと思ってるんですか」
「もうこんな無茶はやめてください」
「アンタは正真正銘のバカです」
そんな言葉を、これまでにもう何度聞いただろう。
何度この少年を泣かせたのだろう。
何度、この手に包帯を巻かれただろうか。
その度に申し訳なく思う。幾度も繰り返す新八の力ない罵声に、何度も「ごめん」と謝った。
泣かせたいわけじゃない。
護りたいだけなんだ。
けれど、新八が俺を心配して泣く度にどこか安堵している。
ああ、泣いてくれるんだ、と。
俺なんかの為に、こいつは泣いてくれるんだと。
(ほんとサイテーだよ俺ァ)
こんな子供を泣かせて、自分の価値を測る。それが最低でなくて何だろう。
新八が巻き終わった包帯を切って、救急箱に収める。
俺はその手を取って、眼鏡の奥の真っ赤になった瞳を覗き込んだ。
「ごめん、な」
俺の表情はいつもとそう変わらないだろう。元々皮の厚いツラだ。
だが新八は、一瞬そのでっかい目をさらに見開いた後、ぐしゃりと顔を歪めた。
「・・・ばかやろう・・・っ!」
パタパタと着物の上に落ちて染みを作る涙を見ながら、あーあまた泣かせちゃったよと後悔する。
俯いたまま顔を上げない新八の頭をポンポンと撫でてやると、いやいやをするようにかぶりを振った。
それすらも心苦しく思えて、俺はそのまま新八の頭を自分の胸元に抱き寄せた。
出来るだけ優しくしたつもりだが、今の自分の身体はそれすらもかなりの衝撃だったようで、ズキンと鈍い痛みが全身を走る。
「痛ってー・・・・」
気の抜けた声で思わず零すと、新八が離れようと抵抗してくる。
「ばっか動くなって」
「バカはアンタだ!傷口考えて行動してくださいよ!」
腕の中でもがく新八に、俺は抱く腕に力をこめた。
「お前が大人しくしないと銀さんの傷口ガッパリ開くよ?」
「・・・っ!」
途端に大人しくなった新八を改めて引き寄せながら、その背を撫でてやる。
俺の肩口が、だんだんと濡れてゆくのが分かった。
新八の涙と鼻水で。
ぐずぐずと泣き続ける新八の背を、心の中で何度もごめんと謝りながら、繰り返し繰り返し撫でた。
口で言うとまた泣くから、もう喋らなかった。
新八が落ち着くまで、ずっとそうしていた。
人一人が一生のうちに護れるモノなんざ、たかが知れている。
ましてや命なんて重いものを、そうそう護れるはずがない。
自分の一生をかけて、やっと一人護りきれるかどうかだ。
そんなことは分かってる。
分かってるくせに、俺は何度も手を伸ばす。もうこれは病気みたいなもんだ。
取りこぼすと分かっていても、知っていても、何度でも。
そんなろくでもない人間の命を、この子供に任せてもいいのだろうか。
こんな人間の命ひとつで、この子供の全てを縛り付けてしまってもいいのだろうか。
ふいにもたげてくる疑問に、俺はいつも答えを出せずにいる。
こんな自分に「家族だと思ってくれていい」などと言ってくれるこの優しい子供に、いつも甘えてしまう。
家族ってなんだろう。
俺って一体なんなんだろう。
ぼんやり浮かぶその疑問に、新八の涙が答えてくれているかのような気がして、何度も泣かせては確かめる。
ごめん、ごめんと謝りながら、その涙で確かめながら。
泣かせたいわけじゃない。
だけど、泣いて欲しいんだ。
俺の為に。
<了>
銀さんは「ごめん」の深さを分かってません。
なんだろう、上手く言えないけれど、私の中で銀新はこんなかんじでもあります。
心に真っ直ぐな刀を持ってるくせに、どこか歪んでる銀さんが好きだったり。
銀さんはどうしようもなければどうしようもない程好きです(苦笑)
そしてですね。タイトルは何て読むのかとかつっこんじゃいけません(苦笑)
湾曲の湾の字が気に食わなかったんですよ・・・;歪むの方がしっくりきたので・・・漢字詐称;