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珠谷ブログ

日々の出来事や妄想など。取り止めのなさが売りです(え)
2024
05,19

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2008
02,15

スルーする気満々で日付も変わっちゃったんですが、ぽっとネタが湧いたので。折角だし(笑)

万事屋風味銀新SSです。
もう私の中でバレンタインは銀さんの為にあるような勢いですよ。
ハッピーバレンタイン銀さん!(笑)


よっしゃ覗いてやろうという方は続きからどぞー。大したモンじゃありませんが;


---------



今にも雪が舞いそうな寒空の中、万事屋の玄関では神楽の元気な声が響いていた。

「新八ー!遊びに行ってくるアル!」

ジャケットにマフラー、手袋も装備して、神楽はブーツを履いた。定春も既にスタンバっている。
だが玄関の引き戸に手を伸ばした時、台所から声が飛んだ。
「神楽ちゃん!!待って待って!」
「何アルか?早くするヨロシ」
皆待ってるネ、と不満げに眉根を寄せると、新八が慌てた様子で玄関までやってきた。
つい先程買物から帰ったばかりの新八は、寒さで頬や耳のあたりを赤く染めていた。しかし神楽は、彼が手にしているモノに目がいく。
新八が持ってきたのは、綺麗にラッピングされた小さな薄い箱。それを笑顔で神楽に差し出してきた。
「ハイ」
「・・・何アル?」
差し出された箱を凝視した後、新八に目線をやる。すると新八は少し照れたように笑った。
「今日、バレンタインだから」
「ばれんたいん、って女が男にチョコやって次の月に3倍返ししてもらうイベントって姐御言ってたヨ」
「・・・・・・いや、なんかちょっと違うソレ・・・」
相変わらずの姉の『女の広辞苑』に脱力しつつ、新八は神楽に訂正してやる。
「日本では基本的に女性が男性にチョコとか渡す風習だけど、別に性別関係なくやってる国もあるみたいだし、日頃お世話になってる人にも渡したりしてもいいんだよ」
だから、僕から神楽ちゃんに、と言って、新八は神楽にチョコの入った箱を渡した。
神楽は「ふーん」と納得したようなしていないような微妙な表情で受け取った。
そしてしばし箱を見つめた後、ぎゅっと抱えるように胸元に持っていった。
「新八ありがとアル!」
はにかんだように笑って言う神楽に、新八も笑顔で「どういたしまして」と答えながら、神楽の素直なところは可愛いなーと思っていた。

2人の様子を大人しく見守っていた定春だが、いつまで経っても開かない玄関に焦れて、一声鳴いた。
するとはっとした神楽は、チョコを大事そうに抱えながら玄関の引き戸を開けた。
定春が我先にといった様子で飛び出す。
神楽は一度振り返り、思い出したかのようにポケットから小さな赤い箱を取り出して新八に投げて寄越した。
「え、神楽ちゃ・・・?」
「それは私からアル!大事に食べろヨ!!」
続けて「行ってくるアル!」と満面の笑顔で言って、神楽も外へ飛び出していった。
突風に見舞われたかのように呆然と送り出した新八は、眼鏡を直しながら神楽に投げ渡された物を見る。
「・・・酢昆布だ」
小さな赤い箱は、神楽の嗜好品だった。彼女なりの『バレンタイン』だったらしい。
新八はどこかくすぐったいような気持ちで笑って、台所へと戻った。


「・・・さて」
新八は思い直すかのように一息つく。
台所の作業台には、スーパーの買物袋と、神楽に渡したのと同様の箱が置いてある。
「・・・問題は、こっちだよな~」
箱を手に取った新八は、溜め息をつく。それはまぎれもなく、彼の上司に渡すべく購入したチョコだった。
「神楽ちゃんにはともかく、銀さんに改めて渡すとなると、なんかなぁ~・・・」
日頃から糖分過剰摂取の銀時に対して、新八はいつも口酸っぱく「糖をとるな!」と言いまくっている身だ。それなのにそんな自分があえて糖分を彼に与えるのか、という思いも勿論ある。
けれど問題はそこではなく。
「・・・・・・これが『本命』になるってトコだよな・・・」
新八は重く深い溜め息をついた。

上司である銀時と『そういう仲』であるとしても、男同士だ。『日頃お世話になってますチョコ』なら問題ないかもしれないが、それ以前に『そういう仲』であるからには、これは『本命』という意味合いがどうしても強くなる。
正直言って、いわゆる普通の恋人同士的なことを改めてするのが、新八はこっ恥ずかしいのだ。
「・・・・・・やっぱやめようかな」
別に銀時本人からもねだられたという訳ではない。たまたまスーパーのバレンタインコーナーの前を通って、なんとなく購入しただけだ。
新八は腕を組んで悩んだ。

渡すべきか。
渡さぬべきか。

当の銀時本人は、珍しく入った仕事に出かけている。だがもうすぐ帰ってくるだろう。

「あーもーめんどくさい!」

しばらく真剣に悩んでいた新八だが、やけになって叫んだ。そのままの勢いで箱を鷲づかみ、戸棚に放り込む。
そこに隠しておけば、数日後にでも銀時が気付いて勝手に食べるだろう、と予測して。
当日でなければ、綺麗に施されたラッピングもバレンタインの意味合いを薄くしてくれるはずだ。

丸投げした新八は、続いて買物袋に詰め込まれた食品等を指定の位置にしまっていく。
そうこうするうちに、玄関からガラガラという音と、気だるげな「たでーまー」という声が聞こえてきた。
新八の心臓が一瞬跳ね上がる。
戸棚の奥が、凄く気になるが、無視だ無視!と念じて玄関へと足を運ぶ。
「・・・おかえりなさい」
「おー」
銀時は玄関でブーツを脱いで、ふらふらと新八を通り過ぎていった。すれ違い様に新八の頭をポンと撫でる。
そのまま居間へ向かい、ぐったりとした様子でソファに倒れ込んだ。
「・・・・・・づか"れ"だー」
「ご苦労様です。今お茶淹れますね」
今日の依頼は大したモノではないからと言って、銀時が一人で引き受けたのだが、なかなかに大変だったようだ。
新八はいそいそとお茶を淹れ、居間へ戻る。
机の上に湯呑みを置くと、銀時はだるそうに起き上がり、湯呑みを取って一気に飲み干した。
そうして2回おかわりした後、ようやく一息つく。
その様子を大人しく見守っていた新八だが、思い出したように口を開く。
「あ、銀さん。ご飯冷蔵庫に入ってますから、神楽ちゃん帰ってきたら温めて食べてくださいね」
「・・・何、お前もー帰んの?」
新八の台詞から察した銀時は、不思議そうな顔で新八を見た。
「ええ。今日はうちに九兵衛さんが来るんで、そろそろ帰って仕度しないといけなくて」
「・・・ごくろーなこって。」
料理出来ない姉を持つと大変だな、と続けた銀時は、机に湯呑みを置いてソファに寝転んだ。
『今日はもう活動終わり!』と言わんばかりにだらだらモードに突入する。
新八は湯呑みを片付けると、帰り支度を始めた。
台所を出る際、戸棚をチラリと見る。

(・・・もう、このままスルーでいいかな・・・)

ふぅ、と息を吐き出し、居間で寛ぐ銀時に声をかける。
「じゃあ銀さん、僕帰りますんで」
「おー」
「ご飯炊けたら保温にしといてくださいね。あと食べ終わったら切っといてくださいね」
「・・・おー」
気のない銀時にげんなりしながら、玄関へ向かう。
独りでぐるぐる悩んだ自分がバカみたいだと思うと、無性にイライラしてくる。
「銀さんそのまま寝たら風邪ひきますからね!」
「・・・わーったって」
居間から聞こえてくる銀時の声は、どこまでも気だるく。
『気をつけて帰れ』の一言も寄越さない彼に、新八は腹を立てる。

そして、ガラガラガラ、と引き戸を開けて、悔し紛れに投げた、一言。

「戸棚にチョコがありますんで」

そう言って、新八は勢いよく戸を閉めた。


なんなんだよチクショー!とやり場のない怒りを胸の内でぐるぐるさせながら、階段を下りようとした。
その時。

ダダダダダダダダンッ!!

室内から、物凄い音が聞こえ、新八はびくっと肩をすくめた。
続けざまに、引き戸が蹴散らさんばかりの勢いでもって開かれる。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

中から飛び出してきたのは、銀時で。
新八は、大きな瞳を零さんばかりに開いた驚きの表情で彼を見た。

「・・・しんぱち」
「・・・なんですか?」
ぜーぜー言いながら銀時が名を呼ぶ。彼の剣幕に、新八は一瞬怯んだ。
「さっき、なんつった・・・?チョコとか、って、っぶ!?」
裸足のままよろよろと出てきた銀時は、玄関の僅かな段差に躓いて、顔面からすっころんだ。

「・・・・・・・・・ぷ。・・・っはははははははは!!」

普段ならお目にかかれない銀時の珍事に、新八は絶句した後爆笑した。

「・・・新ちゃん酷い・・・」

居た堪れない顔で銀時が新八を仰ぐが、新八はしばらく腹を抱えて笑い続けた。先程までのささくれた感情は、既にどこかへ消えていた。
延々と笑い続ける新八に、やるせなくなった銀時は玄関先で胡坐をかいて座り込み、「なんだよちくしょー」と言いながらぐしゃぐしゃと自分の頭をかき回した。

「・・・まさか貰えると思ってなかったから動揺しちまったんじゃねぇか」

悔しげにポツリと呟く声に、新八は笑いすぎて流れた涙を拭いながらも、愛しいなぁと思った。







-----------------

書いてるうちに「おかーさァァァん!!」と叫びたくなりました(笑)
新八もううちにお嫁においでよ!!(真剣)
最近が新神熱いです。

銀さんは、相変わらずかわいそうな扱いですが、これでも緩くしたんですよ。最初は玄関で躓くんじゃなくて新撰組ヨロシク階段落ちの予定だったし、くだんのチョコもカカオ99%のやつとかいうオチだったりする予定でした(・・・・・・)
いや、それはあまりにかわいそうかな、と思ってやめたんですよ;へへ(笑って誤魔化す)

何はともあれ、ハッピーバレンタイン!←



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